格闘映画

2022年5月 5日 (木)

本日の映画 『THEフェイタル・レイド 特殊起動部隊』

『THEフェイタル・レイド 特殊起動部隊』
 2019年 香港 監督:ジャッキー・リー

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 いつのまにか世間はゴールデンウィークに入り、なかには10連休なる人々もいるようで。
 こちらは未だコロナ影響により、従来にはなかった業務が加わって、数々の休日がフッ飛んでいる。
 しかもシフトは突然にやってきて、金曜日に土日出勤が確定するなどオールモスト・ブラック。
 安息の日はいつ来るのだろう。

 

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 さて、本作。
 『レイド』という言葉が付くと、イコ・ウワイス主演の『ザ・レイド』を連想してしまう。
 格闘映画として最高峰といっても過言ではないが、当然ながら映画業界はこの成功にあやかろうとする者が続出する。
 こうなると厄介なもので、オリジナルに似ている場面があるのなら見てみたいというファン心理も働いてしまう。
 数々のナンチャッテ邦題に騙されたファンは、やがてそれ自体に魅力を感じるようになる。
 こうやって低級マニアは形成されていくのだ。

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 そして、私もレイドと聞けば必ず反応してしまう身体になってしまった。
 他にも『ゾンビ』『ジョーズ』『デッド』『エクソシスト』などの言葉がある。
 もう理解しているはずなのに、なぜ追いかけるのか。
 これを人はレイニー・ブルー現象と呼ぶ。

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 まず本作のジャケ写で気になる点を挙げてみよう。
 ショートカットの女性がメインのようである。
 釈由美子氏風だが、どうやらセクシー婦警系の作品かもしれない。
 セクシー婦警がマーシャルアーツを駆使して闘う内容と仮定して鑑賞しよう。

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 舞台はマカオ。
 ストーリーを説明してしまうと、本作の魅力は激減してしまうのでやめておこう。
 冒頭からセクシー婦警の活躍はあるものの、これを全面にフィーチャしているわけでもない。
 どちらかといえば、ストーリー重視。
 パトリック・タムが主演の、正義を信じ、正義に疲れた男たちの物語である。

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 レイド級の格闘シーンは残念ながらないものの、女優たちは飛びつきからの関節技などを披露。
 あまりカンフー経験は無さそうだが、努力賞には匹敵する。
 機関銃、マシンガンなども適度な武器揃え。

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 全体的に小粒感は否めないが、バランス良く収めている印象。
 ジャケ写のショートカットは婦警の中ではエース級の扱いだが、演じるはマレーシア出身の歌手リン・ミンチェン。
 それが台湾でネットアイドルとして人気が出たらしく、映画にも進出!?
 でも、やはりカンフーはマスターしていないと香港作品は物足りないんだよなァ。

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2019年9月23日 (月)

本日の映画『ザ・レイド レディ・ミッション』

 『ザ・レイド レディ・ミッション』
 2017年 インドネシア 監督:ヘルフィ・カルディット

 

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 イコ・ウワイス主演の『ザ・レイド』は、インドネシア産格闘映画の存在を一気に高みに押し上げた。
 私はイコがそれ以前に主役を務めた作品『タイガー・キッド』から注目せずにはいられなかったが、今度は女性が主役の作品が出現。
 女性格闘映画は香港が突出しているが、本作にも期待感を抱かずにはいられない。

 

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 本作のストーリーは、極めて単純。
 テロリストが大使の娘を誘拐、とある島に立て篭もる。
 政府に無茶な要求をし、従わない場合は人質の島民を殺すと脅迫。
 偵察のヘリが島に近づくと、テロリストはRPGで撃墜。
 今度怪しい動きしたら、人質の命は無いよとテロリスト優位な状況に。

 これは迂闊には動けない。
 軍では極秘特殊作戦が練りに練られた。
 軍が動けなければ、格闘技の達人を集めた特殊チームを結成すればよいではないか。
 しかも女性なら、テロリストは気付かないだろう。
 極めて無謀とも思える作戦は何故か承認され、メンバーのスカウトが始まる。

 

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 シラット、カンフー、テコンドー、クラヴ・マガなど、格闘技その他のスペシャリスト総勢10人が集う。
 これを束ねるのは、女鬼軍曹。
 徹底的なスパルタ教育は、一般人をわずかの期間で軍人に仕上げた。
 テロリストに占拠された島で、人質奪還作戦が開始される。

 

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 10人は、多いのではないか?
 その心配は、的を得ていた。
 せっかくの格闘技全部盛りも、あまりクローズアップされずに終わる。
 それでも女性によるシラット、クラヴ・マガ披露は珍しく、、格闘映画マニアには少なからず感動をギブる。
 内容は予想よりハードよりで、香港映画にあるようなコミカル部分は少ない。
 一般人ながら軍の教えを守り、任務遂行のために命も顧みない女性らの心的変化もお国柄を反映しているのかもしれない。

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 島潜入時のカモフラージュである水着モデル装いシーンが適度な色気を放出。
 テロリストとの戦闘は、必死感溢れる流血大バトル。
 テロリスト側の使い手も、良い味出しています。

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2018年7月15日 (日)

本日の映画 『スーパー・ボディガード』

 『スーパー・ボディガード』
 2016年 中国 監督:ユエ・ソン

 *ネタバレあり

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 暑さが、止まらない。
 天気予報を見ても、30度を軽く越える地域が続出だ。
 いつの間にか、蝉の鳴き声が当然のように日常に紛れているが、カレンダーでまだ七月半ばと思い知る。
 それでも、週一のジョギングだけは、何とか続けている。 
 昨年、旧友に逢ったことで思い出された高校生時代・夏合宿の記憶。
 うだるような暑さの林道を、何時間歩いたことか。
 何年も忘れていた記憶の封印が解かれ、不快な暑さの中に妙な懐かしさが顔を出す。

 さて、本作。

 監督・脚本・主演は全てユエ・ソンと、格闘映画にはありがちなパターン。
 現在の時点では、おそらくユエ・ソンの知名度は高いものではないだろう。
 ユエ・ソンの漢字の表記は、岳松。
 岳松さんと覚えれば、それは赤塚不二夫の某漫画を知っている我々には馴染み深く感じるかもしれない。

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 この岳松さん、武術の基本は截拳道。
 そう、かのブルース・リーで有名な武術だ。
 本作を位置付けるなら、エンタメ系アクション・ジークンドー映画と分類できるだろう。

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 残念ながら、本作のストーリー自体に特筆すべきものは見当たらない。
 昭和の頃の少年漫画が基本と呼べるような作りだ。
 ある人物が、何者かに追われている。
 そこに遭遇した主人公ウー(ウルトラマンに登場した雪の怪獣ではない)。
 結果として、男を助けることになった。
 それが縁となり、再び再会した両者。
 男はウーに何かを感じ取り、自分の娘フェイの護衛を依頼する。

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 フェイは、何者かに狙われていた。 
 その事件に関しては、かつての兄弟子ジャンも絡んでいた。
 ジャンのボスである影の支配者フーが、事件の黒幕だったのだ。
 そして、ウーはフーとの知られざる確執を知る。

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 激しい闘いの中、ジャンの送り込んだ精鋭たちに敗れてしまうウー。
 フェイは拉致され、その命が奪われるのは時間の問題だった。
 奇跡の復活を果たしたウーは、再びジャンの護衛会社に乗り込む。
 格闘のプロたちが集結したビルは、闘技場と化した。
 無数の敵を相手に、遂にウーの百八蹴拳が炸裂する!!

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 主人公ウーは、鉄足拳という武術を習得。
 その奥義が、百八蹴拳だ。
 中盤まではターミネーターのような強靭さを誇るウー。
 この時点で、まだ真髄を見せていない。

 ウーを表現するなら、

 ・時代遅れの野暮なスタイル(バンダナがヤバい)
 ・所構わずの開脚訓練
 ・車と同じ速度の脚力
 ・走行中の車に真正面からドロップ・キックする破天荒さ

 …と、なる。

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 実は両足に鉄靴なるものを履いていて、その重量は片方で25㎏。
 その状態で車と同じぐらいのスピードで走るのだから、足枷が取れた時の力量は半端ないって。
 これがクライマックス、百人相手の無双脚劇に繋がっていく。
 一度負けた相手へのパワーアップ・リベンジは、格闘映画のお約束。
 攻撃時のレントゲン画像挿入による骨折描写は、仕事人・念仏の鉄。
 二本指で秘孔突きは、北斗の拳・ケンシロウ。
 80年代に思春期を迎えた方々は、親指立てて賞賛する演出も。

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 ヒロイン・フェイの影がイマイチ薄い気がするものの、大富豪のワガママ娘という役どころは、演じたリー・ユーフェイの雰囲気とマッチ。
 前作『キング・オブ・ザ・ストリート』から比較すれば、進歩と言えるだろう。

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 ストーリーに特徴がなく、ワイヤー多発。
 (CG使用は無しとの触れ込み)。
 格闘映画として最高峰とは言い難いが、エンド・クレジットのメイキングを見ると製作の苦労や熱意が伝わってくる。
 格闘映画ファンなら、観賞して損はないだろう。

 
 

 

 

2016年8月20日 (土)

本日の映画 『マキシマム・クラッシュ』

 『マキシマム・クラッシュ』
 2015年 タイ/アメリカ 監督カオス

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 ひっさしぶりの投稿。
 その理由は、暑さ。
 部屋にクーラーないからね、地獄なんですよ、この季節は。
 ヘッドフォンつけて映画観るから、余計にホット。
 窓から入る自然の風にわずかな涼を求めるも、感じられるは地球温暖化クライシス。
 早く秋にならないかな~、佐々木あき。

 一方で、観たい映画ややりたいゲームがドンドン溜まる。
 安い購入先を見つけたからで、仕入力アップしたのだわさ、アッチョンブリケ。
 こういうのを嬉しい悲鳴というけれど、質より量のホビーライフに微かなクエスチョンも抱きます。

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 さて、本作。
 ジャケ写には、堂々のスコット・アドキンス。
 てっきり彼が主役と思わせ、作品冒頭で出演者名にケイン・コスギやゲリダニ(ゲイリー・ダニエルズ)の名をアピール。
 B級マーシャルアーツ・マニアは興味津々間違いなしのオープニングだ。
 そして開始早々、ショック・ウェーブ第一波が押し寄せる。
 アレッ?
 アレレのアラレちゃん。
 しばし脳内をホヨヨの文字が飛び交う。
 そして発令された空襲警報。
 やっちまったか~!?
 不安を乗せた僕らの船は、広い海原を波と風に任せて漂う。
 マストもない。
 オールもない。
 ただ一艘、ポツンと浮かんでいる。
 ああ、太陽がいっぱいだ。

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 数多くの作品を観てくれば、これで作品の方向性は見えてくる。
 それでもこれだけのマーシャルアーツ・アクターが揃っているのだから……。
 その期待感は、ラスト10分前まで続く。
 そして、衝撃のラストを知った時、怒りとも呆れとも取れる感情は、おそらくは主人公であるジョニーに向けられるはずだ。
 

 ちなみに、主人公はスコット・アドキンスではなかった。
 ケインでも、ゲリダニでもない。
 『ソード・ウォリアーズ』のダスティン・ヌェンといベトナム人俳優である。
 彼自身、武術の経験があるらしいのだが、スコットらと比較すれば特徴的な動きができるわけではないようだ。

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 本作の大筋は、娘を失った父親(元CIAエージェント)の復讐劇。
 娘を殺害したのは誰か?
 その原因を究明し、ヤバい連中に父親が怒りの鉄槌を振り下ろす内容だ。

 私的感想だが、本作にマーシャル・アーツを期待してはいけない。
 ラストの設定を除けば、一般アクション作品としてソコソコのクオリティは保っているとも思う。
 しかし、格闘映画マニア垂涎のキャスティングをしておきながら、まったくマインド・ダンスしない作りはやはり問題があると思う。
 観客のニーズ置き去り。
 アクション映画の醍醐味が何であるか。
 製作側の姿勢に統一感がなかったようだ。

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 夏、真っ盛り。
 窓の外には蝉の声。
 娘の死因が、まさかあのような内容だったとは……。
 わずかに涌いた心の寒さも、すぐにまた暑さに呑みこまれていく。
 あたしのココロは、夏模様……。

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2016年7月 3日 (日)

本日の映画 『チーム・コンバット』




 『チーム・コンバット』
 2015年 アメリカ 監督:フィリップ・リー

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 本ブログ・格闘映画レア・カテゴリで紹介した『ベスト・オブ・ザ・ベスト』『ベスト・オブ・ザ・ベスト2帝王伝説』。(『ベスト・オブ・ザ・ベストは4作品あります)
 実施的な主人公を演じたフィリップ・リーが、再びスクリーンに凱旋!!
 80年代後半~90年代の格闘映画マニアなら、ちょっとした感動を禁じえない出来事です。

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 もっとも。ジャケを見る限りではティーンズ・ガイが前面に押し出され、フィリップ・リーの作品であるとは一見気付きませんね。
 私も観賞始めて、ようやく気付いた始末。
 DVD雑誌買うの止めて、どうも情報不足になっています。

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 本作を簡単に説明するならば、『ベスト・オブ・ザ・ベスト』1作目のキッズ版。
 スポ魂・確執といった要素はヌルめ。
 コメディ色をブレンドし、健全な青少年に是非ご覧いただきたい。
 そういう想いが、溢れんばかりに漂う作品に仕上がっています。

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 かつて、稲妻ジミーと呼ばれたMMA(総合格闘技)チャンピオンが、コミュニティ・センターのコーチに就任。
 貧しい子供たちに格闘技を教え、共に歩んでいく姿が本作の基本路線。
 ちなみに、通称の由来は、過去に稲妻が直撃したというショウモない笑いを誘っています。

 トニー・ジャーやイコ・ウワイスが活躍する現代、あえて80年代臭プンプンの作品を製作して大丈夫なのか?
 要らぬ心配をしちゃいますが、私的には意外と楽しめました。

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 メインは子供たちですが、アクションは想像以上。
 さすがはフィリップ・リーといったところでしょうか。
 テコンドーの蹴技主体なので、画面映えします。
 少年たちの繰り出す回転蹴りは、一番の見せ場でしょう。

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 逆にフィリップは指導役に徹し、本人自体のアクションは控え目。
 見た感じ、まだまだ動けそうな気がしましたので、ちょっと勿体ない作りです。

 マニアなら、クライマックスの大会審査員に注目したいところ。
 リチャード・ノートン。
 ドン・ザ・ドラゴン・ウィルソン。
 ダン・イノサント。
 ベニー・ユキーデ。
 ジュン・チョン。
 彼が実名で登場。
 ただし、年取った感は否めませんが……。

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2016年5月16日 (月)

本日の映画 『ドラゴン・コップス』

 『ドラゴン・コップス』
 2013年 中国 監督:ウォン・ジーミン

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 会社は、繁忙期ど真ん中!!
 なのに凶悪!?な風邪が社内で流行し、あちらこちらで咳の音が聞こえてくるよ。
 こちらは予防で、マスクを終日装着。
 顔が暑いぜ、こんちくしょう!

 今、伝染されでもしたら、這いつくばってでも出社しなければならない。
 やだよ~、ダルい状態で仕事なんて。
 気合いで病気を抑えられたら、世の中に医者なんていらない。
 調子が悪くなったら、即休み。
 これって、『ゆとり』の考えか?
 でも私は、昭和生まれ。
 昭和ですが、なにか……。

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 さて、本作。
 あのジェット・リー出演だけあって、純粋なカンフーを期待した人たちが多いみたい。
 某レンタルDVDのレビューを見たら、何と酷評のストームが発生しているではないか。
 確かに中だるみはあったけれど、ここまで評価が低いとは思わなかった。
 逆に感心しちゃった私は、ますます世間との乖離を認識せざるをえなくなってきました。
 いっそ、目指しちゃう?
 仙人ってやつを。

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 作品解説を読むと、ジェット・リー主演ってなっているけれど、どちらかといえば香港若手人気俳優ウェン・ジャンのウエイトが高い。
 そして二人の女上司に、『あの頃、君を追いかけた』のミシェル・チェンを抜擢。
 『あの頃~』の清楚な女子学生から一変。
 コミカルな演技と、ほんのり色気を醸し出して、新たな一面を見せてくれています。

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 金持ちの男たちが微笑を浮かべて死ぬという連続殺人事件が起き、ベテラン刑事ホアン(ジェット・リー)と新米刑事ワン(ウエン・ジャン)のコンビが犯人を追うという内容。
 コミカルな演技が中心だけれど、その中にカンフー・シーン(ワイヤー&CG多様)も用意されています。

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 幾つかの映画のオマージュ要素が強く、元ネタを知っているコアなファンはニヤリ。
 リーVSウー・ジンや、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』を想起させるラスボスとの死闘もしっかり魅せます。

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 逆をいえば、オマージュ要素を除いた魅力に乏しく、単体での独立したバックボーンが薄いということになります。
 だから、酷評が多いのでしょう、きっと。

 笑いの質も日本とは微妙に違います。
 楽しそうな雰囲気は感じられるけれど、自らラフできるネタでないというのが正直な感想。

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 逆に、サービス・ショットの何者でもない女性が登場し、フェロモンを振り撒きます。
 これは多分に効果ありで、飽きそうになった展開の穴を、強引に埋めにきました。

 まるで、羽衣を纏った天女さまや~。

 酒に酔ったジジイがコンパニオンに囁くベタなセリフが、きっと貴方の脳裏に浮かぶでしょう。
 これ見よがしのフェロモンに、私は抗う術を知らない。
 
  

 

2016年1月15日 (金)

本日の映画 『少林寺への道』

 『少林寺への道』
 1976年 台湾・香港 監督:ジョセフ・クオ

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 私がジャッキー・チェンを知ったのは、確か中学時代。
 彼の主演作がきっかけで、長きに渡る格闘マニアの道に足を踏み入れたのです。
 友人が雑誌の切り抜きをコレクションしていて、これは誰だろう?と思ったのがきっかけ。
 何となく興味を持ちながらも、しばらくはジャッキー作品を観賞するまでには至りませんでした。

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 ある日たまたま立ち寄った電気店。
 陳列されたテレビに流れていた名も知れぬカンフー映画が流れていました。
 今でも作品名や俳優すら判らない作品ですが、それまで特撮ヒーローの格闘シーンしか見たことのない自分には、あまりに異色な闘いが繰り広げられていたのです。
 これが、カンフーか。
 スゲェぜ、カンフー。
 多感な時期に出逢ったカルチャー・ショックは、私の中に確実に種を蒔きました。
 そして、実際にジャッキー作品を観て、その種は実を結んだわけです。

 ひととおりジャッキー作品を観賞し、私の興味は他作にも移っていきました。
 ブルース・リーやジェット・リーは元より、白人アクターなどにもその対象は拡大。
 結局、その興味は失せることなく、本日まで続いています。
 本作にはジャッキーは出演しておらず、作品のタイトルだけは聞いたことがあった程度の認識でした。
 何故かデジタル・リマスターとなって発売されたようで、私的には格闘映画マニアの原点を思い出させるような存在です。
 また、ビジュアル的にも凄まじいインパクトがあり、一度観たら絶対忘れないレベルと言えましょう。

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 さて。
 本作の時代背景は、明朝末期。
 明と清の争い激化する中、明の関将軍邸が襲撃に遭います。
 将軍らは殺害され、一歳の赤ん坊・少龍だけが従者の手によって救いだされます。
 少龍は物心ついた頃には、少林寺に入門。
 カンフーの腕を磨き、修業の日々を過ごします。
 時には兄弟子のサポートを受けながら、少龍は最難関の三十六房に挑戦。
 少林寺に潜む十八銅人の試練に耐え、免許皆伝になるまでが実質の第一部。

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 そして、親の敵である『黒い鷹』とよばれる将軍を倒すのが、第二部として構成されています。 
 このパートでは、同じ目的をもった許嫁と兄弟子である鉄君との協力体制でバトルを繰り広げます。
 凄腕三人が揃う訳ですが、敵である『黒い鷹』も少林寺最大の奥義・十八羅漢拳を既にマスターしており、勝負の行方は全くわからず。
 そして『黒い鷹』は複数の影武者を用意し、その影武者の数が必要以上に多すぎるという異色さも、本作の魅力の一つといえるでしょう。

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 見どころとしては、やはり少林寺での修業シーン。
 ジャッキー作品とは異質のものですが、常人離れした内容は顕在。
 飛び道具が次々に襲う部屋や、針が迫る通路など、ギミック的にも楽しめます。
 失敗したら、絶命必至の仕掛けも多数。

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 また、十八銅人のデザインは当時だから許されるレベルですが、見た人間にしか判らない不思議な達成感を得られます。
 流行りの言葉に置きかえるなら、『とにかく,金色な坊さん』。

 ホワーイ、少林ピープル?
 金色である意味に説明を求む。
 そして、私のようなマニアは秘かに思っていることでしょう。
 少林寺の十八銅人は、はたして実在したのか?と。
 金粉塗って、本当に闘っていたのだろうか?
 金粉、高けーし。
 汗で落ちるし。
 もったいねーし。
 ……と、まあ、歴史的興味が次々に湧きおこること間違いなし。

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 その他にも、修業僧が大きな鐘の中に入って、外部からそれを突く。
 当然、中の修業僧の耳を轟音が襲うわけで、主人公なぞは鼻血流して悶絶
 見るからにキツそう。
 鼓膜なんか、鍛えられるんですかね?
 科学的でないなんて言ったら、ダメよー、ダメダメ。
 こういう修業が、カンフーの魅力なのです。

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 作品自体は、やはり旧さは否めません。
 ジャッキー・チェンの初期作品、リー・リンチェイ主演の『少林寺』や『阿羅漢』、ショウブラザーズ作品を好む方にのみ、面白さの真価が発揮される作品と言えます。

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2015年11月14日 (土)

本日の映画 『エクスペンダブルズ・コップ』

 『エクスペンダブルズ・コップ』
 2007年 アメリカ 監督:アート・カマチョ

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 ありえねー組み合わせでアクション映画ファンの度肝を抜いた『エクスペンダブルズ』シリーズ。
 その恩恵に少しでもあやかろうと、ひっそりリリースされた本作。
 当然ながら、何の関係もございません。

 本作のキャストは、おそらく一般ピーポーの方には誰?的疑問が間違いなく湧きおこるであろうアクター達です。
 私的にはドン・ザ・ドラゴン・ウィルソンとオリバー・グラナーの共演に興味を禁じえなかったのですが、これはマーシャル・アーツ作品を80年代より見守ってきた伯爵だからこそなせる感覚。
 日本においては、かなりマニアックな部類に入るでしょう。

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 私的にはどちらのファンにも属さないのですが、マーシャルアーツ映画マニアの性といいますか、とりあえず鑑賞せずにはいられない状態になっちまう訳です。
 ドン・ザ・ドラゴン・ウィルソンは、その名の迫力から期待度MAXなんですが、どうにも格闘アクションにスピードとキレが足りないようで、動き重視の私は何度も期待を裏切られたものでした。
 それでも、何故か観なくてはならない衝動に駆られてしまう、不思議なアクターです。

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 オリバー・グラナーは、私的ランキングではチョイ格上。
 ルックスと、とりあえずソコソコのキレはありますので、作品によっては化けるかも…という感覚です。
 しかし、未だにこれは!!という作品には出逢えておらず、モヤモヤ感はドラゴンに近いでしょうか。

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当たるのか!?こんな撃ち方で……

 さて、本作。
 他にB級アクションでは御馴染らしいフレッド・ウィリアムソンとゲイリー・ビジーも名を連ねます。
 これにどれだけ吸引力があるか知りませんが、私のようなマニアには価値のあることなんでしょう、たぶん。

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 ストーリーは、犯罪組織壊滅のための証人が消され、その現場を目撃した売春婦エンジェルを二人の刑事が警護するという単純なもの。
 エンジェルはシングル・マザーで、なんとドンとのロマンスなんかもあります。
 ドンにラブ・シーンなど誰も期待していないと思われますが、肝心のアクションよりこちらの方が印象に残ってしまうのは、時代の経過が原因か、はたまた監督の力量不足か。
 往年のマーシャル・アーツ・アクターを2人も起用しながら、格闘シーンに何らロマンを感じないのは残念で仕方ありません。
 
 そうなってくると、本作の見所は二つ。
 オリバー・グラナーの2丁拳銃の射撃スタイル。
 および、証人売春婦エンジェルの、ポロリ注意報が止まない胸元。
 ドント・ミス・イット!!

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2015年7月19日 (日)

本日の映画 『ドラゴン・ガール』

『ドラゴン・ガール』
2014年 ブルネイ 監督:シティ・カマルディン

*本記事は、かなりネタバレの内容になっております

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 本作のジャケットを見れば、かなりのショボサを感じとることができます。
 低級映画を目の敵にするハイソな方々は、まずスルーすること間違いなし。
 かくいう私も、スルー寸前でした。
 にもかかわらず鑑賞した理由は、題材が東南アジアの格闘技『シラット』だからです。
 シラットといえば、イコ・ウワイス主演の『ザ・レイド』が有名ですが、私はそれ以前にリリースされた『タイガー・キッド 旅立ちの鉄拳』から注目。

 格闘映画マニアとして、感動の涙を流した作品でした。
 もしかしたら……!?
 本作もスゲェ作品かもしれません。
 その可能性が1000分の1であったとしても、0でない限り私の意思は揺るがないのです。

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 主人公ヤスミンは、父との二人暮らし。
 母親は事故で既に他界している。
 まずまずの父娘関係だったが、娘も思春期を迎え、微妙にその関係に変化が見え始めていた。

 ヤスミンの憧れは、幼馴染みのアディ。
 彼はシラットの全国大会で優勝し、町の英雄として凱旋していた。
 友人の協力もあって、ヤスミンはアディと再会。
 しかし、アディはヤスミンの同級生・デウイと親しいことが判明。
 止められぬアディへの想い。
 彼の気を惹くには、私もシラットを学ぶしかないわッ!!
 ヤスミンは、自分の通う高校の、シラット部の門を叩く。

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 部員は、ヤスミンの他にアリとナディアのわずか3名のみ。
 顧問の先生は、口先だけ達者で、一向にシラットの技術を指導してくれない。
 それでも、和気あいあいと活動するヤスミンたち。
 地区大会に出場し、なんとか初戦を突破するも、自分たちの力不足は明白だった。

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 ヤスミンには、もうひとつ問題があった。
 父親が、シラットを習うことに猛反対しているからだ。
 どうにか説得するも、この事は後に大きな火種となってしまう。

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 ようやく、自分たちの師範となるべく人物を探し当てたヤスミンたち。
 ジャマル師範は車イス利用の不自由な身体ながら、指導方法は的確だった。
 腕を上げた三人の、快進撃が続く。
 それと共に、ヤスミンの願いどおりのことが起こった。
 急速にヤスミンとアディの距離が縮まっていく。
 目標が達成され、自ずと離れていくチームへの想い。
 とうとうヤスミンは仲間に嘘までついて、練習をさぼってしまった。
 知らず知らず、ヤスミンは自己中まっしぐらの道を歩んでいく

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 勝ち進んでいた試合も、次第に相手は強敵となっていた。
 特に恋敵デウイの実力を思い知ったヤスミンは、もっと攻撃的な技を熱望するようになる。

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 ジャマル師範に断られたヤスミンは、人知れず別の人物に弟子入りした。
 その人物とは、闇の武術家と呼ばれる、破壊的な技の持ち主だった。
 相手の破壊だけを目的とする技。
 それは時を遡り、父やジャマル師範をも巻き込んだ因縁であることをヤスミンは知らない。
 ヤスミンは新たな技とともに試合に向かうが……。

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 ジージャーのシラット版かと予想していましたが、全く違う内容でした。
 どちらかといえば、学園青春映画に分類できます。
 そのため、壮絶なバトル・アクションは期待しない方が良いでしょう。
 アクションだけなら、イコ・ウワイスに任せておいた方が間違いありません。

 前半もヌルい展開で、これは外したかな?と思っていたら、後半に持ち直しました。
 ブルネイ映画は初めて鑑賞しますが、ストーリーに丁寧さが見られます。
 あるデータでは、本作はブルネイ・インドネシア共作となっています。
 なるほど、インドネシアが絡んでいるのであれば、この丁寧さは頷けます。

 格闘映画にありがちな、復讐といった要素が少ない分、爽快感などはどうしても割引。
 ですが、シラットへの愛着や健全さなどは、確実に伝わってきます。
 未熟さからの成長がテーマの為、ヒロインもかなり現代っ子風に描かれていて、これも他作とは一線を画す特徴の一つ。

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 ショボいと思って観ると、意外な奥深さを味わうことができます。
 私的にお勧めは、親父さんがシラットの技を披露するシーン。
 両の拳で同時に突く必殺技で、ヤスミンのツリー・ハウスが倒壊。
 『私は、シラットを熟知している……』の台詞に、震えがきましたよ。
 それでは皆様、おヤスミン…。
 

 

2014年9月 7日 (日)

本日の映画 『リベンジャー』

 『リベンジャー』
2011年 フランス・タイ 監督:ジャン=マルク・ミオネ
主演:ジョン・フー

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主演のジョン・フーは、ゲーム『鉄拳』の実写版映画で主演を務めた俳優さんです。
ルックスと格闘技の動きから注目していたのだけれど、ようやく新作が出たって感じですかねー。

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1990年、バンコク。
サマット警部補宅が何者かによって襲撃され、警部補とその妻は惨殺される。
その場に居合わせた少年マニットも頭に銃弾を喰らい、瀕死の重傷。
辛うじて一命を取り留めたが、マニットの生存を知った犯人らは病院に向かう。

少年が狙われていることに気付いた看護師は、マニットを連れ出し、知人の元へ。
この知人こそ、ムエタイマスター・アジャンだった。

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アジャンの秘薬によって、マニットの命は救われた。
しかし、脳を損傷した代償は大きかった。
マニットは感情を失い、無痛症の後遺症が残ってしまった。
以後、マニットはアジャンの元でムエタイを習いながら生活をする。

やがて、運命の輪は、再び廻りはじめた。
両親を殺害した犯人の手掛かりを得たマニット。
究極のムエタイ技を武器に、マニットの復讐が始まる。

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設定は、興味深いものがあります。
脳の損傷による無感情。
そして無痛症。
格闘モノでは、極まれに見かけます。
実際には、敵役がそういう設定だったりしますが、本作は主人公自身。
これが上手く機能すればいいのですが、本作ではちょっと疑問でした。

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設定どおりに感情を出さず、淡々と戦う主人公。
ただし、その裏に両親を殺害されたという復讐が存在しますから、従来の作品ならば怒りを爆発させて敵を掃討する爽快感が生まれます。
ラストで、そのような描写を挿入しているものの、明確にクローズアップしていないので、作品全体を押し上げる爆発力にはなっていません。

同じことが、最期の技にも言えます。
主人公は、マスターから自分の死を覚悟した必殺技なるものを伝授されています。
当然、これがラストを飾るわけですが、これが実に判りにくい。
マスターの見せた動きをきちんと覚えていなければ、これがあの必殺技なんだと思わないでしょう。
普通は、修業シーンを回顧して、印象を高める手法が用いられますが、本作にはそれが欠けています。

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前半は、ジョン・フーの動きも含め、期待度を高めます。
しかし中盤からは、オカマを含めた女ギャング集団など、敵の質もガタオチ。
チビッ子少女が大人をサンドバッグ状態にするシーンの面白さもありますが、肝心のストーリーラインからは逸脱といえるでしょう。

無感情ながら、ロマンス部分も多少。
でも、私的には相手のジャーナリスト姉ちゃんに萌え無し。
格闘シーンのカメラワークも悪く、せっかくの格闘シーンも魅力半減。
素材は、悪くないのだけれど……。
純粋なタイ映画だったら、もっと期待できたかも。
何故に、おフランスの血が入っているのでしょうか?