本日の映画 『デッド・カーニバル』
『デッド・カーニバル』
2017年 アメリカ 監督:エヴァン・セシル
※本記事は、グロテスクな表現を含みます
ホラー映画にも、いくつかのセオリーがある。
ひとつのジャンルで多くの類似作品が作られた場合、セオリー崩しが始まる。
表現したいことは同じでも、何か他作との区別化を図らなければならない。
目立つことをしなければ、生き残れない。
製作側は、必死にアイデアを絞らなければならないのだ。
たとえば、スクリーム・クイーン。
殺人鬼たちに散々な目に遭わされて、逃げ惑う。
やがて恐怖を怒りに変えて、殺人鬼に中指を立て、『サノバビィッ~チ!!』と叫んで撃退。
コスチュームはタンクトップにホットパンツで、画面に映える。
このパターンを捨ててしまうのは、かなりの勇気が必要だ。
美女がズタボロになりながらも、セクシーさと爽快感を醸成してくれる効能を捨ててしまうことになる。
それに替わる何かを準備できるか。
これは、なかなか難しい。
ここに本作の冒険がある。
主人公はイケ面ながらも、かなりのヘタレ。
このヘタレさは最期まで続くのだが、これがどうにもヤキモキしてしまう。
本来なら、おバカでお色気担当の被害者要員も、アクティブ・シニアに変更だ。
元気な老人たちの日帰りツアー参加客なのだ。
彼らが立ち寄ったロデオ・パーク。
テーマパーク風にした観光牧場で、最大の見せ場はロデオ・ショー。
それなりに楽しんだシニア一行だが、帰り際彼らの前に一人の女性が助けを求める。
そこへ登場した黒ずくめのカウボーイ。
彼は特殊な武器で女性を殺害した。
目前で繰り広げられた惨劇に、パニクるシニア一行。
なんとか逃げ出すものの、添乗員のサイモン君は置き去りに。
サイモン君は、他にも捕らわれの身となった被害者たちと共謀して逃亡を図るのだが……。
いわゆるアメリカの田舎は、理不尽が一杯系のストーリー。
動機なんて糞喰らえ。
倫理の欠片も存在しない。
そんなカントリー・ヘルが繰り広げられる。
被害者たちは家畜のように扱われ、様々なパターンで被害に。
グロ度は比較的高めで、派手さが感じられる。
テンポ速く、殺人鬼と被害者の追いかけっこ形態も飽きがこない工夫が見られる。
殺人鬼は特殊な方法で筋力をアップし、被害者の首にロープを巻き付けてスィングなんて場面も。
当然シニアも被害に遭い、凄惨な末路を辿る者もある。
一般人が鑑賞したら、当然けしからんなんてご意見も噴出しそう。
これをシャレと捉えることができるか、できないか。
できない人は、そもそもホラー観る必要ないんじゃないのと思うのだが、何故か鑑賞してしまうんだな。
それで正義感振りかざしてしまう。
虚構を楽しむものなのに、無理に現実に持ち込もうとする。
でもね、シニア俳優さんの演技は生き生きとしているんだなぁ、これが。
定年もどんどん延長されているのだから、シニア活躍の場が広がってもいいんじゃない。
ホラーでもね。
エンドロールに流れる曲が素晴らしく、余韻に浸れます。
意外にも爽快感が味わえて、Good Job!