本日の映画 『フェノミナ』
『フェノミナ』
1985年 イタリア 監督:ダリオ・アルジェント
主な俳優:ジェニファー・コネリー ドナルド・プレザンス ダリア・ニコロディ
※本記事は、グロテスクな表現を含みます
ホラーマニアには、言わずもがなの名作。
私も何回観賞したか、思い出せないほどです。
当然レビュー済と思っていたら、どこにも記事が見当たらない。
考えてみたら、メジャー作品って誰もが取り上げるので、天邪鬼精神が働いて避けていたのでした。
最近、もっと楽に生きようと、精神改造真っ只中。
許容範囲を意識的に拡げ、くらげのようなライフを目指しております。
さて、本作。
主人公ジェニファーは、アメリカで人気のアクターを父に持つ。
母が出て行っちゃったので、ジェニファーはスイスのリヒャルト・ワグナー女学校に入学することになった。
この地は、スイスの魔境とも呼ばれている。
その原因は、フェーンという熱風が吹き、人をおかしくさせるというのだ。
真偽は不明だが、明らかに不吉な事件が起きていた。
少女を狙った連続失踪・殺人事件である。
人々は、シリアル・キラーの存在を疑っていた。
異変は、すぐに始まった。
完治したと思っていたジェニファーの夢遊病が再発したのだ。
混沌とした意識の中、ジェニファーは見知らぬ少女の殺害現場に遭遇してしまう。
どうにか難を避け、ジェニファーは昆虫学を専攻するマクレガー教授と出会う。
マクレガーは、ジェニファーの持つ不思議な能力に気づく。
そう、ジェニファーは昆虫と意思疎通できるのだ。
学校に戻っても、ジェニファーは落ち着かない。
そんな中、ルームメイトのソフィーが行方不明に。
校長はジェニファーの異常性を疑い、果ては精神病院に送ろうと画策。
友人たちからも苛めを受け、ジェニファーは学校を去る。
再びマクレガー邸を訪れたジェニファー。
犯人の手袋に付着していたウジからヒントを得て、犯人の居場所を探す。
しかし、魔の手はマクレガーに迫っていた……。
こんな美少女がホラーに!?
当時のホラー界は、話題持ちきり。
さらにイタリア流グロ描写も健在で、その取り合わせが斬新すぎた。
加えてBGMはゴブリン、アイアン・メイデン、モーター・ヘッド等のヘビメタ色強し。
強烈な個性をミックスすれば、たいていは失敗する。
しかし、本作は長い間マニアに愛され、ホラー史に君臨しているのだ。
冒頭のシーンから、本作の魅力は開花する。
バスに乗り遅れた観光客が殺害されるシーンだ。
こちらもキュートな女性だが、演じるは監督の娘フィオーレ。
殺人鬼に後頭部を叩きつけられ、顔面にガラスの破片が落ちる。
その割れ具合が見事で、そこから切断された生首が滝を下っていく。
生首や 白糸たぐり 眺めせしまに
その後、その首はウジ湧くナイスな姿をマクレガー教授邸で晒すことになる。
死体の腐乱加減にスポットを当てるなら、やはりプールが最強だ。
辛うじて原形を留めた肉片や骨。
頭部を這う鮮度抜群のウジ。
熟成度クラウン級の発酵汁。
そこにジェニファーを落とす発想は、アイデアマンというより精神の破綻すら疑うほどである。
しかし、これが本作の魅力のひとつであることは間違いなく、我々の中に眠るフェチの源を発掘する。
満を持して登場するウジ王子の存在も、ミラクル。
造形と動きの気味悪さが、80年代ホラーを象徴するようだ。
この子の生い立ちは、ガイガー警部が訪れた精神病院から想像できる。
暴力、精神異常の遺伝。孤立感。嫉み。羨望など……。
想像力たくましい私は、殺人鬼のやるせない心情を理解してしまった。
ドロドロに汚れ、血臭漂うスイスの田舎町。
ジェニファーは、浄化を担う天使だったのかもしれない。
感心するポイントは、他にも存在する。
大量の蝿がジェニファーを助けるシーンなど、虫の描写が秀逸。
スタッフの苦労を窺い知るシーンだ。
また、マクレガー博士の介護を務めるチンパンジー・インガが素晴らしい。
物語でも重要な役割であり、チンパンジー界のアカデミー賞必至の演技を披露する。