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2018年1月14日 (日)

本日の映画 『屍憶』

 『屍憶』
 2015年 日本/台湾 監督リンゴ・シエ

 *本記事は、グロテスクな表現を含みます

Sok001

 アジアン・ホラーの醍醐味は、ウエット感にある。
 多湿という気候はあまり関係なく、宗教観が主たる要因だと思う。
 だからホラーもアメリカの怪物系が多いのに対し、日本は心霊・幽霊系が圧倒的な数を誇る。
 興味深いのは、日本にも怪物文化はしっかり存在していて、それが妖怪といえよう。
 ただ妖怪ホラー作品は、とてもメジャーとはいえないジャンルだ。
 妖怪の、どことなくユーモラスな外見は、ホラー作品としてのビジュアル化に適していないのかもしれない。

 例えば、河童。
 頭に皿。
 落武者的ヘアーカット。
 好物きゅうり。
 やべぇ設定であること、この上ない。
 これにホラーを感じるだろうか?
 しかし、その特性をきちんとビルドしてみよう。
 人の肛門に手を突っ込み、内臓を引っ張り出す。
 その場面を想像すれば、これは明らかにスプラッターだ。
 念仏の鉄よりずっと凄まじい殺害方法である。

 …と、千恵子は今日もいふ。

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 さて、本作。
 

 主人公ハオは、餃子ではなくテレビプロデューサー。
 結婚目前の恋人イーハンと暮らしている。
 仕事は順調で、結婚式の準備と共に多忙気味な日々を過ごしている。
 
 異変は、『冥婚』をテーマにした番組を制作した時から始まった。
 霊能者に助言を求めると、異変の原因は前世から続いているという。
 ハオは、友人と共に過去の出来事を調べる。

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 一方、女子高生インイン(水泳部)の周囲でも、尋常でないことが起きていた。
 周囲で起こる心霊現象に、当惑する彼女。
 やがてインインは、祖母も霊視能力を持っていたことを知る。

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 二人の周囲で起こる超常現象。
 その因果関係は?
 果たして、二人の運命はいかに……。

Sok004

 制作に『リング』『呪怨』などのプロデューサー・一瀬隆重氏。
 ベースは、モロにJホラーです。
 台湾ホラーは珍しく、正直期待感はありませんでした。
 未発達だから、品質は低いだろうって。

 ところが、私的評価は予想以上にアップ。
 Jホラーの良さと台湾素材を見事にマッチさせています。
 ストーリーを追っていくと、実際かなり不安になります。
 ハオとインインの行動が全くクロスせず、二つの物語が別に進行しているかのように思えるのです。
 しかし、そこにはラストに向かう緻密な計算が隠されているのでした。
 そう、いわゆるドンデン返しです。

 韓国やタイのホラーは、このドンデン返しが重視されています。
 推理小説的要素ですね。
 Jホラーは作品の品質がマチマチで、これが抜けている作品も多く見られます。

Sok008

 幽霊描写(特殊メイク)も、期待以上の出来栄えでした。
 特に冥婚の妻である女性の容姿。

 奇病に因る顔面崩壊。
 それを苦にしての自殺という設定で、ビジュアル的恐怖を確保しました。
 その家族が弛緩した女性の遺体を懸命に支え、結婚の杯を交わそうとする場面の不気味さ。イッツ、ディスガスティング!!

Sok005

 最後に、本作のテーマとなった『冥婚(メイコン)』について。
 メイコンとは、姪との合コンでもヤギの結婚でもありません。
 結婚せずに亡くなった者を家族が不憫に思い、死後に結婚させる風習。
 地域も台湾のみならず、中国や韓国、フランス、そして日本にもあるとのこと。
 ただ、地域によって内容は異なるそうです。

 本作では、女性を対象にしています。
 冥婚を行おうとする娘の家族は、赤い封筒に彼女の髪、または大切にしていたものを入れて、それを道端に置きます。
 その封筒を拾ったものが、死者の娘を娶ることになるのです。
 私はよく台湾に行きましたが、こんな話は知りませんでした。
 もし私が拾っていたら、知らぬ間に台湾デッドとウェディングになっていたわけで…。

 恐ろしいこと甚だしいのですが、この因習が存在している事実に着目しましょう。
 仮にその対象が自分の家族だったら?
 自分の娘・姉・妹が結婚を目前にして不慮の死を遂げたら?
 それが結婚直前なら尚更です。
 その無念さは、計り知れないでしょう。

Sok007

 家族への不憫さと愛情が、喪失感に拍車をかけます。
 『冥婚』が、残された家族の心の救済を果たすと言えないでしょうか?
 亡くなった者に婚約者がいれば、その男性は喜んで冥婚を受け入れるかもしれません。
 無関係な人には迷惑な話かもしれませんが、死者への愛情、残された者たちの心の慰めという意味で、冥婚の存在意義が判るような気がします。
 
  

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